音楽が響く二つの世界:熱狂するメキシコのBTSと、ゼロからギターを掻き鳴らす元KANA-BOON古賀

メキシコシティの中心部が、地鳴りのような歓声に揺れていた。現地時間水曜日、国立宮殿のバルコニーに姿を現したK-POPグループ、BTSを一目見ようと、実に5万人もの熱狂的なファンが押し寄せたのだ。クラウディア・シェインバウム大統領との面会という、一国の国家元首を巻き込んだこの異例の熱狂は、彼らが現在行っているワールドツアー「ARIRANG」のハイライトの一つと言っていいだろう。

シェインバウム大統領は同日の定例会見で、BTSを「常に友情と平和、愛のメッセージを運んでくれる存在」と手放しで称賛している。大統領自身、今年1月のツアー日程発表時から「歴史的瞬間」と色めき立つ若者たちの熱量に寄り添ってきた背景があり、もはや単なるいちアーティストの興行という枠を完全に超えている。

本番前日の月曜の時点で、レフォルマ通りはすでにお祭り騒ぎだった。楽曲に合わせて路上で踊り、タトゥーシールを顔に貼って気分を高めるファンたちの姿を形容するには、熱狂という言葉すら少し生ぬるい。参加者の一人であるジュード・ペラエスが語った「感情的、心理的に準備を整え、この場所のエネルギーやバイブスを作っていくんです。それがメキシコ流ですから」という言葉には、彼らが音楽を単に消費するのではなく、コミュニティの儀式として全身全霊で体験しようとする姿勢が滲む。BigHit Musicによれば、メキシコは今やK-POP市場の世界第5位。今週末にエスタディオGNPセグロスで開催される木・土・日曜の3公演のチケットが瞬殺されたのも、必然の流れだ。

片や、何万もの群衆が愛と平和の象徴として世界的スターを讃える光景がある一方で、音楽界のもう一つの現実がふと頭をよぎる。何万ものペンライトの海から遠く離れた暗がりで、過去の過ちを背負いながらカメラに向かって深く頭を下げる、ひとりのギタリストの姿だ。

「この度はご迷惑をおかけして、本当に申し訳ございませんでした」

黒いスーツに身を包んだ元KANA-BOONの古賀隼斗が、自身のYouTubeチャンネルで深々と謝罪したのは29日のこと。昨年12月、ドラムス・小泉貴裕の女性トラブル(妊娠・中絶報道)と時を同じくして、自身のプライベートにおける素行不良を理由にバンドを脱退、事務所を契約解除となってから約1年が経つ。表舞台から完全に姿を消していた彼が、ようやく重い口を開いた。

今年7月にXで新しいアカウントを作り、「これからもギターを通して音楽に携わりたい」と呟いてはいたものの、その後は再び沈黙。活動再開が多方面へ波及する影響を考慮して自粛を続けていたというが、かつては日本のロックシーンの最前線を走っていた男の現在の足場は、あまりにも脆い。

現状、今後の具体的なプランは何も決めきれていないという。それでも、今までとは違う形であれ音楽を諦めきれず、YouTubeというプラットフォームに活路を見出し、「ゼロからのスタートとして目の前の活動に真摯に向き合っていきたい」と語った。

国家ぐるみの歓迎を受けてスタジアムを熱狂の渦に巻き込む世界的アイコンと、炎上の焼け跡から這い上がり、自室でギターの弦を弾き直そうとする男。あまりにも対照的な二つの光景だが、どちらも「音楽」という業の深い魔力に囚われた人間たちのリアルな現在地だ。華やかな歓声の裏には常に転落の危うさが潜み、どん底の静寂の中でもまた、微かな音を鳴らそうとする執念が生まれる。彼らが爪弾く音がそれぞれどのパラレルワールドに響き渡っていくのか、その行く末はまだ誰にもわからない。