日常の熱狂と劇場の熱波:朝ドラのSNS現象から週末興行ランキングが映し出す日本のエンタメ現在地

毎朝お茶の間に届けられる15分の人間ドラマが、時に数十億円規模の映画をも凌ぐ熱量でSNSを席巻することがある。日本のエンタメ界隈におけるコンテンツ消費の面白さは、まさにこの「日常」と「ハレの日(劇場)」のコントラストにあると言っていいだろう。

神木隆之介が主演を務めるNHK連続テレビ小説『らんまん』が第11話を迎えた日の朝、タイムラインの話題をかっさらったのは主人公の万太郎ではなく、一人の蔵人だった。物語の中で18歳になった万太郎が野山で美しい「ジョウロウホトトギス」という未知の花との出会いに心を躍らせている裏で、視聴者の視線は峰屋の酒造りに注がれていたのだ。

縁談よりも酒造りに情熱を傾ける姉の綾(佐久間由衣)と、彼女に酒造りのいろはを教える蔵人の幸吉(笠松将)。そして、立派な働き手として万太郎を支えつつ、綾に密かな恋心を抱く奉公人の竹雄(志尊淳)。さらに東京の博覧会への出品という新たな展開も転がり込み、物語の推進力は一気に加速している。

とりわけネット空間をざわつかせたのが笠松将の存在感である。「あのかんざしを拾った子?綾野剛に似てる」「幸吉さんイケメン過ぎてしんどい」「落ち着いた佇まいが素敵」といった声が瞬く間に溢れ返り、「綾姉ちゃんを巡って幸吉と竹雄の三角関係勃発か」と今後の展開を深読みする視聴者も続出。毎朝抜け出す万太郎の行動や、懐中時計の修復といった細部の伏線回収にもツッコミが入るなど、見事な盛り上がりを見せている。

そもそも本作は、高知県出身の植物学者・牧野富太郎の生涯をモデルにしたオリジナル脚本だ。病弱でいじめられっ子だった少年が植物の虜となり、野山を駆け回ることで頑健な肉体を手に入れ、小学校中退という学歴の壁を越えて独学で東京帝国大学植物学教室の門を叩く。妻・寿恵子を演じる浜辺美波の存在や、あいみょんによる主題歌「愛の花」、宮崎あおいの語り、そして週ごとに変わる草花を冠したサブタイトルなど、盤石の布陣が敷かれているからこそ、脇を固めるキャラクターたちの魅力もより一層引き立つというものだ。

このようにテレビドラマが日々の話題を牽引する一方で、週末の映画館では既存の強大なIPたちが熾烈な興行レースを繰り広げている。

最新の週末動員ランキングで初登場3位に滑り込んだのは、実写映画の第2弾となる『映画 おそ松さん 人類クズ化計画!!!!!?』だ。全国205館で封切られた本作は、公開3日間で動員14万1000人、興収2億1800万円を記録。2022年3月に公開された前作(動員45万9000人、興収6億4300万円)と比較すると33.9%の立ち上がりとなり、数字の面だけで見ればやや落ち着いたスタートに見える。しかし興味深いのは鑑賞者の熱量だ。国内最大級の映画レビューサイト「Filmarks」の初日満足度ランキングでは堂々の1位を獲得。789件のレビューに基づく平均スコアは「4.30」を叩き出し、前作の「3.53」を大きく上回る高評価を得ている。興行規模こそ縮小したものの、コアファンのツボを的確に押さえた「刺さる」作品へとブラッシュアップされていることが窺える。

一方、公開から10週目を迎えてなお5位に踏みとどまっているのが、劇場版アニメ第29弾『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』だ。公開から66日間で累計興収は132億1000万円を突破。これは前年公開の『隻眼のフラッシュバック』の同期間成績(141億7000万円)の93.2%という推移である。すでに日本歴代興行収入ランキングでは『アナと雪の女王2』(133億7000万円)の背中を捉える32位にまで上り詰めており、コナンブランドの底知れぬ集客力を改めて見せつけている。

ランキングの少し下にも目を向けてみよう。9位に初登場したのは、2月に公開された短編CGアニメの総集編に新規カットを追加した『エクストラ・サービス:ミルキー☆サブウェイ 銀河特急〜劇場行き各駅停車』(全国190館公開)。オリジナル版が公開後2ヶ月で動員41万人、興収5億5000万円を稼ぎ出した手堅い人気をベースに、着実にファンを劇場へ呼び戻している。

実写化作品の明暗も分かれた。鈴木祐斗のコミックを原作とする実写版『SAKAMOTO DAYS』は公開7週目で先週から2ランクダウンの10位と粘りを見せるが、斉木優の少女マンガの映画化『山口くんはワルくない』は公開2週目にして早くもトップ10圏外へ。また、劇場版アニメ3部作の完結編『劇場版モノノ怪 蛇の呪い』も公開3週目で惜しくも11位へと後退している。

毎朝のテレビでふとした瞬間に見せる俳優の表情に心奪われることもあれば、劇場の大スクリーンで何十億円という予算が注ぎ込まれた国民的アニメのスペクタクルに酔いしれることもある。結局のところ、フォーマットの大小に関わらず、現代の視聴者が渇望しているのは、自分の中で誰かと語り合いたくなるような「熱量」の引き金なのかもしれない。